コラム

Column

タイムラプスインキュベーター導入しました。

2020.05.30

トピックス

タイムラプスインキュベーターとは

タイムラプスインキュベーターとは、胚(受精卵)をインキュベーター(培養器)の外に出すことなく胚の成長を撮影し、動画として観察することができる装置です。

今までは、採卵後3~6日間にわたってインキュベーターの中の胚を取り出し、数回の観察を行っていました。もともと、インキュベーターは『一番理想的なお母さんのお腹の中の環境』を再現するように設計されています。胚をそのインキュベーターの外に出すと、温度も空気も全く違う環境にさらされるので、胚にはとても大きなストレスがかかります。そのため、胚培養士がいかに短時間で効率よく胚を観察し作業をするかは、日々の課題でした。

タイムラプスインキュベーターは、今までの数回の観察より情報量が多くなるため、異常な受精や分割を見つけやすくなります。
当院では最新型タイムラプスインキュベーターを導入し、より良い胚培養環境を提供しております。

当院のタイムラプスインキュベーター
タイムラプスインキュベーターでの観察

培養室の中の受精卵

体外受精の際、採卵された卵子はどのようにしてお母さんのお腹に戻っていくのでしょうか?
まず、採卵された卵子は、子宮と卵管の中の成分に近づけて作った培養液に移されます。この培養液の中で卵子と精子を受精させます。

受精の方法には、体外受精(cIVF)と顕微授精(ICSI)という2種類の方法があります。
体外受精(cIVF)は、培養液の中で卵子と精子を混ぜあわせて自然に近い形で受精させる方法です。精子の数が多くて運動性も良い場合はこの方法を選択します。

顕微授精(ICSI)は、ガラスの針を使って卵子に精子を注入する方法です。精子の数が少ない場合や精子の運動性が低い場合、また体外受精(cIVF)で正常に受精しなかった場合に行う方法です。

受精した卵子は受精卵または胚と呼ばれています。胚を培養する時にも培養液を使います。培養液はインキュベーターという専用の培養器によって、温度・pH・浸透圧などがお母さんのお腹の中のように調整されて、胚が成長するのに必要な環境を維持しています。受精が確認出来た胚は、お母さんのお腹に移植(ET)または凍結されるまでインキュベーターで培養されます。

胚の成長

胚はインキュベーターの中で、細胞分裂を繰り返して成長していきます。これを分割といいます。卵子が正常に受精すると、1つの卵子の中に前核が2つ見える2前核期(2PN)と言われる状態になります。しばらくすると2つの前核が消えて最初の分割が起こり、2細胞期(2cell)の胚になります。次にこの2つの割球が同時期に分割して4細胞期(4cell)になり、続いて4つの割球が分割して8細胞期(8cell)になります。

8細胞期から16細胞期になる段階で、割球と割球がくっついて(コンパクション)1つの塊に見える桑実胚(そうじつはい・モルラ)になります。さらに時間がたつと、桑実胚の中に胞胚腔という液胞が出来ます。この段階が胚盤胞(はいばんほう・ブラスト)で、内側の膨らみが胎児になる内部細胞塊(ICM)、外側の膜が胎盤になる栄養外胚葉(TE)です。

一般的な胚の発育経過

良好胚とは?

初期胚

コンパクションする前の胚を初期胚(又は分割胚)といいます。割球の大きさが同じか?フラグメントの量・成長速度で判断し、1~5で評価します。
例えば8Cell(G1)は8細胞のグレード1を意味します。
フラグメンテーションとは細胞が断片化したものを指します。一般的にG1とG2の胚が良好胚といわれています。

初期胚の評価 ( Veeck分類による)

G1 : 割球が等分割で、フラグメントが5%以内
G2 : 割球が等分割で、フラグメントが 5-20% 以内
G3 : 割球が不等分割で、フラグメントが5% 以内
G4 : フラグメントが20 – 50% 以内 (割球の分割状態が判別できる程度)
G5 : フラグメントが50% 以上 (フラグメントで割球の分割状態が判別出来ない)

胚盤胞

胚盤胞は成長のステージを数字で、ICMとTEの数や質をA~Cで評価します。例えば成長ステージが4の胚盤胞で、ICMの形態が良好で、TEの形態が良くない場合、4ACといったグレードになります。

胚盤胞の評価