未受精卵子凍結・保存技術

未受精卵子凍結・保存とは

未受精卵子凍結・保存とは

            一般的に女性の妊娠率は、35歳から減少しはじめ、その傾向は40歳を超えるとより顕著になります。そのため、女性が多く社会進出し活躍している現在、出産適齢期を逃しがちになり、妊娠を望んだ時には卵子の老化によりなかなか授からないといった悩みを多くの女性が抱えています。その問題を少しでも改善できる方法として、より若いうちの質のいい卵子を凍結保存しておこうとする「未受精卵子凍結・保存技術」が今、注目されています。加齢などの要因が増える前の卵子を凍結することで、将来の妊娠・出産の可能性を残しておくことが期待できます。

毎日、体内で新しく作られる精子とは異なり、女性の卵子は胎児期から減っていく一方で新しくは作りません。そのため、女性の年齢が高くなるにつれ、卵巣内の卵子の数・質が変化し、妊娠の確率は低くなり、流産率は高くなります。

未受精卵子凍結の流れ

未受精卵子凍結の流れ

  1. 成熟した卵子を数多く回収するために排卵誘発剤を使用します。排卵誘発剤を内服、または注射により、卵胞を複数育てます。
  2. 麻酔下に、排卵直前の状態の時に超音波下で経膣的に採卵針を穿刺し、卵胞液に含まれる卵子を採取します(採卵)
  3. 採取された卵子は凍結保護剤を使用して凍結し、液体窒素中-196℃に保存します(凍結)

妊娠を望んだ時

  1. 凍結されていた未受精卵子を溶かします(融解)
  2. 精子を卵子の細胞質に注入し受精させます(顕微授精)
  3. 受精した胚を数日間、培養器で培養します(胚培養)
  4. 適切な時期に胚を子宮内に移植します(胚移植)
未受精卵子凍結の成績

未受精卵子凍結の成績

加齢などの要因によって卵子の融解後の生存率等に影響を及ぼすといわれています。35歳までに未受精卵子の凍結を行った場合、凍結融解後の未受精卵子の生存率は90-97%、受精率71-79% 、臨床妊娠率36-61%という報告があります。(Fertillity steril 2013;99:37-43)また、40代を含む幅広い年代を調査した下記の論文では、凍結融解後の未受精卵子の生存率は68.6-89.7%、受精率71.7-85.8% 、臨床妊娠率10.8-43.3%と報告されています。
(Cil AP, Bang H, Oktay K. Age-specific probability of live birth with oocyte cryopreservation: an individual patient data meta-analysis. Fertil Steril. 2013;100:492–9.)

未受精卵子凍結の考えられるリスク

未受精卵子凍結の考えられるリスク

未受精卵子凍結におけるリスクはいくつかあります。
排卵誘発剤による卵巣過剰刺激症候群(腹痛、腹部膨満感)や、採卵時には痛み・腹腔内出血・炎症、麻酔による影響などのリスクが考えられます。また、卵胞を穿刺をしても卵子が採取出来ない場合や、卵子が未熟や変性卵の場合は、凍結が出来ない可能性もあります。
将来、妊娠を望まれた時、凍結未受精卵子を融解した際に卵子の回収が不可能である場合や卵子の変性が起きてしまった場合は顕微授精をおこなうことができなくなります。また、顕微授精を行っても受精卵が得られない、または胚が順調に発育しない場合は胚移植が行えない可能性もあります。
当院では、リスクを最大限に抑えるような処置を行っていますが、これらのリスクも考慮した上でご検討ください。

未受精卵子凍結の費用

未受精卵子凍結の費用

詳細な費用についてはこちらをご覧ください。

将来、妊娠を望んだ際は、卵子融解代および顕微授精代、胚移植代等が必要です。
詳細はスタッフにお尋ねください。

社会的適応による未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存ガイドライン

社会的適応による未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存ガイドライン

  1. 加齢等の要因により性腺機能の低下をきたす可能性を懸念する場合には、未受精卵子あるいは卵巣組織(以下「未受精卵子等」という)を凍結保存することができる。
  2. 凍結・保存の対象者は成人した女性で、未受精卵子等の採取時の年齢は、40歳以上は推奨できない。また凍結保存した未受精卵子等の使用時の年齢は、45歳以上は推奨できない。
  3. 本人の同意に基づき、未受精卵子等を凍結・保存することができる。
  4. 実施にあたっては、口頭および文書を用いて、未受精卵子等の採取、凍結と保存や、凍結された未受精卵子等による生殖補助医療(顕微授精)について十分に説明し、本人の同意を得るインフォームド・コンセント(IC)を実施しなければならない。
  5. 未受精卵子等は、本人から破棄の意志が表明されるか、本人が死亡した場合は、直ちに破棄する。また、本人の生殖可能年齢を過ぎた場合は、通知の上で破棄することができる。
  6. 未受精卵子等を、本人の生殖以外の目的で使用することはできない。
  7. 本人から破棄の意志が表明され、また凍結された未受精卵子等を本人が生殖医学の発展に資する研究に利用することを許諾した場合であっても、当該研究等の実施に当たっては、法律や国・省庁ガイドラインに沿い、ICなどを含めた必要な手続きを改めて施行しなければならない。