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男性不妊の一因「勃起障害」について【萩生田純医師執筆】

2020.06.18

トピックス

勃起障害(Erectile dysfunction: ED)とは「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られない、または維持できない状態が持続または再発すること」と定義され男性不妊症患者の6%を占めるとされています。

EDには器質性(血管や神経の障害。糖尿病など)心因性(不妊症のカップルで妻側から性行為のタイミングを指定されることで起こることもあります。)混合性に分けられます。リスクファクターとして加齢、喫煙、糖尿病、肥満、運動不足、高血圧などが挙げられ、生活習慣病の1つとも捉えられます。ですから生活習慣を改善させることが重要です。

現在日本で使用可能な勃起補助薬(ホスホジエステラーゼ5阻害薬)は3剤あります。陰茎海綿体の平滑筋を弛緩させ陰茎内に血液を取り込みやすくし勃起を促進します。シルデナフィル(バイアグラ)、バルデナフィル(レビトラ)、タダラフィル(シアリス)の3剤です。

シルデナフィルは最初に発売された勃起不全治療薬で内服後30~60分で効果を発揮します。食事により吸収・効果発現が遅れます。またアルコールの摂取により血圧が低下することがあります。

バルデナフィルも内服後30分で効果を発揮します。高脂肪食で効果が弱まりますがアルコールの影響は受けません。

これら2剤に比べてタダラフィルは内服30分から効果を発揮し食事の影響を受けず36時間持続することが大きな違いです。主な副作用は頭痛、ほてり、消化不良、鼻閉などですが多くは軽度で一過性です。

いずれの薬剤も硝酸薬(狭心症の薬)は作用機序が重なるため血圧低下が起こる可能性があり併用禁忌です。タダラフィルは硝酸薬以外は基本的に併用禁忌薬はありません。一方バルデナフィルは透析患者では使用禁忌、またシルデナフィル、バルデナフィルは一部の抗不整脈薬と併用禁忌で特にバルデナフィルは禁忌薬がシルデナフィルに比べて多くあります。

効果をきちんと発揮させるにはどの薬も内服のしかた(食事のタイミングや高脂肪食の有無、服用回数・量など)を守ることが重要です。3剤は同等の有用性がありどれか1つが優れるということはありません。タダラフィルが安全性や有効率で優れるという報告もありますが各個人にあった薬剤を選択することが重要です。一方インターネットで販売されているものは薬効成分や不純物混入、安全性などの問題がある可能性がありお勧めできません。

参考文献:Yumura Y et al. Nationwide survey of urological specialists regarding male infertility: results from a 2015 questionnaire in Japan. Reprod Med biol. 2017; 17: 44-51.

ED診療ガイドライン第3版 日本性機能学会/日本泌尿器科学会

シルデナフィル
(バイアグラ)
25, 50mg
バルデナフィル
(レビトラ)
5, 10, 20mg
タダラフィル
(シアリス)
5, 10, 20mg
効果発現 30~60分 30分 30分、36時間持続
アルコール 血圧低下 影響なし 影響なし
食事 吸収・効果発現遅延 高脂肪食で減弱 影響なし
透析患者 使用可能 併用禁忌 5mgが最大量
抗不整脈薬 一部禁忌 一部禁忌 影響なし